怖い話

怖い話:「放課後の理科室」

「放課後の理科室」

 

7月の蒸し暑い日の夕方のことだ。

私は学校に宿題を忘れたことに気が付いた。

 

「うわー。学校まで取りに戻るのは面倒くさいな~。]

と思いながらしぶしぶ宿題を取りに行くことにした。

 

「宿題を学校に忘れたからとりに行ってくる~。」と母親に告げると

 

「寄り道しないで気を付けていっておいで~。」と見送ってくれた。

 

夕日で空は赤く染まりはじめていた。

セミの声が響きわたる林の中を通って小走りで学校に向かった。

蒸し暑さで汗が噴き出してくる。

頬をつたう汗を手でぬぐいながら校門までたどり着くと
理科室の窓から人影が見えた。

 

「誰だろう。こんな時間に何してるんだろう?」

と思いながら校舎に入り教室に向かった。

 

教室に行くには理科室の横を通って階段をつかい4階までのぼらなければならない。

 

理科室の横を通り過ぎるときに中をちらっとみると、見たことのない女の子がいた。

 

女の子はじっとこっちを見ている。

 

何か寂しそうな表情をしているようにも見えた。

 

「見たことない子だなー。転校生なのかな?」

と思いながら理科室を通り過ぎ階段を上って教室に向かった。

 

誰もいない階段をのぼる足音が校舎に響いている。

 

ようやく自分の教室がある4階までたどり着いた。

薄暗く静かすぎる教室に入る。

 

「早く宿題を探して帰らなきゃ。」

机の引き出しから宿題を取り出し

薄暗い階段を急ぎ足で下りていく。

 

1階までたどり着き廊下から理科室の中をちらっと見てみると

女の子はまだ教室の中にいた。

 

「まだ帰ってなかったんだ。」

「早く帰らないと暗くなるのに。なにしてるんだろう。」

と思いながら理科室を通り過ぎた。

 

すぐに何か嫌な予感がしたので後ろを振り返ると女の子が廊下から私のほうを見ていた。

 

 

よく見るとその女の子は腰から下がなかった。

 

「えっ!」

私は思わず声をあげた。

 

すると突然

下半身のない女の子は両手をバタバタさせながら私のほうにむかってきた。

 

恐怖のあまり私は走った。

 

下半身のない女の子はものすごいスピードで追いかけてきた。

どんどん距離が縮まってくる。

 

私は「ギャー」と悲鳴をあげて半泣きになりながら必死にに逃げた。

 

女の子は低いうなり声のような声で「ウォー……」と叫びながら追いかけてきた。

 

下半身だけの女の子が私のすぐ後ろまで来ているのがわかった。

 

低いうなり声が耳の後ろで聞こえた。

「もうだめだ。殺される!」

そう思ったとたん足がもつれ転んでしまい
そのまま気を失ってしまった。

 

 

どのくらいの時間気を失っていたのだろうか。

 

目の前が急に明るくなり目を開けると

懐中電灯を持った用務員のおじさんが立っていた。

 

「大丈夫?」

「は、はい。」

震えながら返事をした。

「転んで気を失っていたみたいだね。ケガはしてないようだね。」

「もう暗いから、気をつけて帰るんだよ。」といって玄関まで見送ってくれた。

 

セミが鳴く真っ暗で不気味な林をとおって無事帰宅することができた。

その日の出来事は恐ろしすぎて誰にも話せなかった。

 

あれはなんだったんだろう…

 

あの日私は強く心に誓った。

「もう絶対にに忘れ物をしない」と。

 

もう2度とあんな怖い思いをしたくないから…。